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ストレス敏感性尺度の開発と利用者の解析報告

鈴木麻友 小薬理絵 渋谷英雄

(ピースマインド総合研究所)

目的

ストレス尺度には、ストレス要因や反応を測定するもの、ストレスコーピング(対処)やサポート環境などを測定するものなどが数多くみられる。

本研究では、それら既存尺度とは異なり、NIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health)の職業ストレスモデルに基づく「個人的要因」(主に個人の認知的要因)に焦点を絞り、尺度を開発した。「個人的要因」に開発主体を置いた理由は、うつ病治療としての認知療法に相応の効果が示されていること、個人的要因は個々人の日常的な取り組みによって変化が可能なことなどにより、平常より認知変容を促進するアプローチがストレス対策としての効果が期待されることにある。特に、これまでの働く人々のストレス対策の主体は、業務負荷の調整(Stressorの質量)、サポート充実(support network)、コーピング行動(Coping)の改善・促進などが試みられてきたが、それらの有効化には、個人の努力だけでは限界が見られるのも事実である。

そこで本研究においては、個人の改善努力が可能となる、ストレス反応に呼応している認知部分の感受性(本研究では敏感性と呼ぶ)に焦点を絞り、被験者の認知スタイルとストレス反応の関係を測定することを目的とした。

なお、本尺度は個人的要因や自己行動の振り返りとして活用し、また継続的な測定により自己変容が促される機会となるよう、Webサイトから経時的に自己データを確認することができるシステムを組み込んでいる。これにより、個人的要因の一部であるパーソナリティ部分を客観的に自己把握し、セルフケアに結びつけることができるよう構成され、その継続的測定を行っている。

方法

<予備調査>
「どのような様子からストレスを感じやすい人だと判断するか」「ストレスフルな状況に陥ったとき、ストレスをやわらげてくれる存在(サポート)は何か」「ストレスの強い人・弱い人の考え方」について、複数名に無記名自由記述を求め、192項目のストレス敏感性尺度を作成した。29名の調査協力者に192項目の回答を依頼し、天井効果・フロア効果を確認した。天井効果(13項目)・フロア効果(17項目)の計30項目を削除した。

<本調査>

結果と考察

<デモグラフィック要因の分析結果>
12項目のデモグラフィック要因を分散分析したところ、以下の項目に有意差が認められた。
学歴(p<.05)、職位(p<.10)、趣味や楽しみに接する日(p<.10)、体調不良による仕事の休み(p<.10)、1ヶ月の時間外労働時間(p<.10)、最近のパフォーマンス状態(p<.01)

<ストレス敏感性尺度の分析>
ストレス敏感性尺度について、主成分分析、プロマックス法による因子分析を行った。初回の因子分析で算出されたスクリープロットより、5因子を採択した。次に、因子数を5に設定して再度分析を行い、いずれの因子にも負荷量が少ない項目を削除して分析を繰り返した結果、50項目となった。各因子成分は以下の通り。

第1因子(13項目)…マイナス思考度
自信の程度や、物事のとらえ方の方向

第2因子(13項目)…サポート不足度
周囲環境によるサポートや、回復力の程度

第3因子(10項目)…情緒不安定度
情緒の過敏性と、安定度

第4因子(7項目)…社会不信度
周囲への信頼感と、心理的な閉塞傾向の程度

第5因子(7項目)…エネルギー不足度
行動するために必要な基礎的エネルギーの程度

<信頼性の検証>
下位因子ごとの信頼性はCronbachαで検証を行い、.07以上の高い数値が認められた。

<妥当性の検証>
ストレス敏感性尺度とSDSとの関連性が認められた。

利用者のデータ解析

ストレス敏感性尺度は各企業のサービスサイト上にweb版セルフチェックツールとして掲載している。全50項目、3件法(あてはまる・どちらともいえない・あてはまらない)。利用者は回答後、すぐに画面上で結果を確認することができる。また、そのデータは蓄積され、経過を振り返ることも可能である。より正確な結果を算出するために、複数回答を回避したり、「どちらともいえない」を20項目以上選択できないようなシステムコントロールを行っている。

今回は、2009年4月~6月末までの利用者5,467件(男性3,763件、女性1,704件)のデータを解析する。なお、同一者が複数回利用することが可能なため、件数でのカウントである。

利用者の傾向をつかむための資料として、いくつかの表を掲載する。当日は、各要因の分散分析結果、高ストレス群と低ストレス群の群間による差異、業種別・職位別の特徴、継続利用者の時系列での分析結果についての発表を予定している。

(表1)性別×年代
年代 女性 男性
10 16 1 17
2 566 749 1315
30 731 1408 2139
40 345 1121 1466
50 40 453 493
60 5 29 34
90 1 2 3
1704 3763 5467

30代の利用が圧倒的に多い。特に男性の利用者が多いのは、企業用の専用サイトという特徴が影響しているものと思われる。

 

(表3)性別×年代
職位
一般職 3185
管理職 1113
専門職 886
役員 19
働いていない 40
その他 184
(空白) 40
5467

やはり一般職の利用が多いが、その割合に対して管理職の利用が多い。管理職のメンタルヘルスへの関心が高まっている現状を反映しているとも解釈できるだろう。

 

今後の展望

ストレス敏感性尺度の結果とストレス反応である唾液のアミラーゼ活性分析による妥当性の検証を予定している。

当日の発表について

本発表では、①ストレス敏感性尺度の開発過程について、②その尺度を実際に使用した5,000件以上のデータから得られた傾向について、③その結果を受け、今後必要な施策なども併せてフロアの皆さんと検討していこうと考えています。

キーワード

ストレス敏感性尺度、認知療法