日本ストレス学会第27回総会「働く人々の災害後ストレス傾向調査」発表概要
2011年11月19日(土)に、国際EAP研究センター主任研究員の藤井が、日本ストレス学会第27回総会にて、「働く人々の災害後ストレス傾向調査~精神的健康と出来事インパクト傾向について~」に関して、口頭発表を行いました。
本調査・分析結果の概要に関して、ここにご報告いたします。
目的
東日本大震災が働く人々に与えた影響について調査し、想定外のストレスへの援助方針を検討する。
対象
調査に了承を得られた、弊社契約企業に所属する従業員のうちメールマガジン受信者(61社、7,068名) 有効回答数:377件(回収率:5.3%)
期間
2011年7月25日~8月5日
方法
アンケート依頼をメールで送付し、Web上の専用ページでGHQ12*1、IES-R*2に匿名で回答する方式とした。
*1GHQ12:General Health Questionnaire;精神健康調査。疾患ではなく、一般的な精神的健康度を測る質問紙。合計4点以上が精神健康度の低い群。
*2IES-R:Impact of Event Scale-Revised; 出来事インパクト尺度。再体験症状、回避症状、覚醒亢進症状を測りPTSDリスク群をスクリーニングする質問紙。合計25点以上がPTSDのハイリスク群。
結果
◆被災の状況(カッコ内は人数)
生死にかかわる被害を受けた(0)、負傷したが命に別状はなかった(0)、家族が亡くなった(4)、避難所を一度でも利用した(5)、家屋や家具に被害を受けた(36)、帰宅困難になった(238)
首都圏回答者*3のうち77.5%(217/280人)が帰宅困難に該当した。
◆GHQ12
精神健康度の低い群は全体のうち38.5%であった。さらに「首都圏回答者」のうち41.1%、「首都圏回答者かつ帰宅困難」のうち42.9%であった(図1)。一般人口での割合15~20%と比較して、精神健康度の低い人が多いと言える。また、χ二乗検定の結果、「首都圏かつ帰宅困難者」である人は、そうでない人と比べて精神健康度の低い人が多いと認められた(p<0.05)。
◆IES-R
PTSDのハイリスク群は全体のうち9.0%であった。さらに「首都圏回答者」のうち9.3%、「首都圏回答者かつ帰宅困難」のうち10.1%にのぼった(図2)。PTSDの生涯発症率は1%、あるいは災害時のPTSD発症率が3.1%との先行研究と直接は比較できないが、高い比率でハイリスク群が存在していると言える。
◆まとめ
本調査の回答者、特に首都圏回答者かつ帰宅困難者では「精神健康度の低い人が多い」「PTSDのハイリスク群が高い比率で見られる」と言える。どこまでが震災の影響か明らかに出来なかったが、被災地の中心から離れており、帰宅困難程度の「被災」であってもPTSDリスクを念頭においた対策が必要と考える。
*3首都圏回答者:回答者のうち、震災時の所在地・現在の居住地ともに首都圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)と回答した者。377人中の280人。
